濵渦の“ホラ“と”可能性“を信じた元ベンチャーキャピタル社長。アラタナの軌跡を語る

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【礒貝秀広 (いそがいひでひろ)】
アラタナの元常勤監査役。ベンチャーキャピタル社長を経て、アラタナの監査役に就任。さまざまな企業を見てきた経験を活かした社内向けメールマガジン「アラタナ版・月刊監査役」を発行。2017年に退任。

会社の「健全で持続的な発展のため」に経営状態やガバナンス体制をチェックする監査役。ほとんどの社員は、監査役に接することはあまりないかもしれませんが、社員とは違った目線で会社を見ていることと思います。

今回は「いそじい」の愛称で慕われた礒貝元監査役に、アラタナとの出会いのきっかけや、アラタナの社員や社風に関してお聞きしました。

生き生きとしたベンチャーを支えるベンチャーキャピタルのおもしろさ。

アラタナ広報(以下 アラタナ) アラタナの前はベンチャーキャピタルの仕事をされていたとお聞きしています。

礒貝秀広(以下 礒貝) はい、地銀系のベンチャーキャピタルの社長をしていました。期間は9年くらいだったと思います

アラタナ ベンチャー企業も数多く見てきているかと思いますが、ベンチャーの魅力はどのような点にあると感じていますか?

礒貝 ベンチャーの素晴らしさというのは、やっぱり成長スピードと経営者・経営陣や社員の生き生きした働く姿にあると思っています。

ベンチャーキャピタル(VC)のときは、若い人からスタートアップにはギリギリかなと思われる年配の人まで、いろんな人・経営者が「うちのビジネスプランを聞いてくれ」とVCのオフィスに来ていただくことが多く、毎日が楽しくてしょうがなかったんですよ。

また、新規の投資案件を求めて営業に飛び出すワクワク感も忘れられません。

新たなサービスや新商品開発の付加価値を世に問うような案件で、不思議と良い案件が出てくるものですから、VCはやめられない、おもしろい仕事だったなと思っています。

売上も小さく赤字なのに「今のうちの会社は2億円の価値がある」とホラを吹く若手経営者に興味をもった

アラタナ どういった経緯でアラタナを知ったのでしょうか?

礒貝 VCの仕事をしていたとき、社内の若い投資担当者が投資案件として持ってきたのがきっかけです。

アラタナが創業して、1年経つか経たないくらいの2008年の頃ですかね。まだ会社を作ったばかりだったこともあって売上も小さく、赤字決算でした。それなのに、経営者(アラタナ現社長の濵渦)が「今のうちの会社は最低でも2億円だ」と言っていると、その投資担当者が言うんですよ。

どのような理屈と計算でそんな時価評価(会社の資産価値)になるのか、普通に考えて計算が合いませんし、23歳くらいだと聞いて、いったいどんな経営者なのかと興味を持ちました。

アラタナ そんな経緯があったんですね(笑)実際に会ってみてどうでしたか?

礒貝 私は2億円の根拠を知りたかったんだけど、その時の濵渦さんの話を聞いてもわからなかったです(笑)

濵渦さんは、ただひたすら自分がやっている事業の成長性と、ECマーケットへの期待をエンドレスにずうっと話すんです。涼やかな顔をして物静かに。ただ、内容は熱いんです。ほんとに若かったですね。ピュアな青年…といった印象でした。

当時、ネットの世界、EC・マーケットの成長性に理解の乏しかった私にとって、ホラとも思えるような濵渦さんの話に魅せられて、最後はもう私も2億円の根拠なんてどうでもよくなってしまいました(笑)

うちの若い投資担当者の「感性と目利き」を信じてみようという気持ちになりました。また、経営者本人にも会ってみて、ぶっ飛んだ変わったことを言うけれども悪いことをするような感じではないな、と思って投資することにしました。

アラタナ なるほど。アラタナはその後2015年に、ZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイに株式を売却しました。2億円(自称)から売却額で約29億円、約15倍近くに成長したわけですけど、投資としてはどの程度リターンがあったんですか?

礒貝 最終的に投資ファンドを清算・解散したところまでは関わっていないので、具体的な数値はわからないのですが、相応の高いリターンだったのだろうと思います。

アラタナ 経緯はどうあれ投資は成功だったということですね(笑)ベンチャーへの投資判断は経営者によるところも大きいんですね。

礒貝 そうですね、ファイナンスの世界は「人」「経営者」に尽きるのです。

最初は、お話したとおり2億円の根拠を聞きに行ったわけですけれど、最後のほうは諭されるように取り組む事業やマーケットのおもしろさ、その成長性の話を聞かされて、だんだんその気になっちゃって…。

濵渦さんって「人をその気にさせる」のが上手でしょう。人たらしな部分があるし。あのタイミングでその気にさせられたのかなぁと今では思います(笑)

結果的にM&Aで、きちんと投資も回収させてもらって、VC冥利に尽きますね。濵渦さんとの出会いも本当に印象的で…。この宮崎という場所で、10年ちょっとでこんな会社にするなんて、すごいよなぁと思っています。

「いい人材を雇うためにも、いい会社にしないといけない」という考え方

アラタナ 投資をした後、アラタナの経営は順調だったのでしょうか?

礒貝 いろんな場面で波乱万丈でしたが売上は順調でした。ただ、稼いだお金を全部、人件費に使うんですよ。どれだけ成長して、どれだけ稼ぐようになっても人材確保を優先してましたね。

財務的な面から見ると、「きちんと利益が出せるような採用計画を」と、立場上は言いたくなるのですが、これも若い経営陣のひとつの経営戦略・経営判断と思って、採用面はもうお任せしていました。だからこそ、今、100人以上の社員を抱える会社にまで成長したのだろうと思います。

アラタナ 人材確保優先だったんですね。

礒貝 私の経験的な実感ですが、ベンチャーではまず「人材」だと思っています。もちろん経営者・経営陣を含めての話ですが…。

経営状況は数字で見えるけど、会社に蓄積された人材やスキルは数字では見えないでしょう。いちばん大事な「簿外資産」なんですよ、人材は。

だから、結果から見れば、これまでの採用はうまくやってきている、間違ってはいなかった、と私は思っています。

アラタナメンバーと話す礒貝元監査役の画像

宮崎のベンチャーを愛し続けた監査役。アラタナの人の魅力を語る

アラタナ なるほど。では、どういう経緯でアラタナの監査役になられたのでしょうか?

礒貝 私はベンチャーのIPO(株式上場)を、ファイナンスを付けて外側から応援する立場だったんですけど、会社の内側から実際にIPOをやってみたい、という気持ちが湧いてきました。

ファッションやECとはほど遠い世界にいましたけど、常勤監査役だったらお役に立てる場面もあるんじゃないかなと思って、「よかったら私を使ってくれませんか」とこっちから勝手に手を挙げました。

「なんの公的資格もないけれど、宮崎のベンチャーを愛することにかけては誰にも負けません」などと偉そうなことを言ってね(笑)

取材に応える礒貝元監査役

アラタナ そうだったんですね。その後、IPOではなくM&Aに至ったわけですが、その時はどう思われましたか?

礒貝 最初聞いたときには寂しいなという気持ちはありました。

ただ、より速くより大きく成長するために、スタートトゥデイのグループに入ったほうがいいという結論に至った背景には、各取締役、また取締役会の成長があったんじゃないかなと思います。

アラタナの会社としての理念と経営陣の意思、これからの我々のお客さんはいったい誰なのか、どのお客さんと成長していこうとしているのか等々。そういったことを、あの当時の若い取締役の経営陣がバチバチと議論していることに、私は感動しました。

アラタナ アラタナの雰囲気や人は、どういう点が魅力に感じましたか?

礒貝 ワイガヤの楽しい雰囲気、ごった煮、雑多なところでしょうかね。

いろんなキャラや価値観を持った人が違和感なく1つの会社で働くということが、もうすごいことだなと思っていました。いろんな人が、いろんなところから来て、アラタナの独特な雰囲気を作っている。

なおかつ取締役・取締役会が持っていた「人材の流動化」の考え方にも感心したんです。

アラタナ 「人材の流動化」というと?

礒貝 金融機関で働いていたときは、人材の流動化なんて考えたこともありませんでした。特に地方では、「入社したら定年まで同じところで勤める」という働き方が一般的なものでしたから。

だけどある日、当時のある若い取締役が私に言ったんです。

「礒貝さん、業界が違うからかもしれないけれど、社員の3分の1は人材が動くのが当たり前なんです。我々もいい人材がほしいし、いい人材を取るためには我々もいい会社にならないといい人材をとれないでしょ」と。また、そういう取締役会の雰囲気でもあったんです。

そんな考えもあってか、優秀な人材を確保するためにはうちの会社がもっと良い会社にならなければいけない、そのためには我々経営陣がもっと頑張らなければならない。アラタナは人材の受給者側でもあるが供給者側にもなっている、というスタンス・認識で当時の取締役会が意思統一されていたんです。素晴らしい考え方だなと思って感心しました。

実際にアラタナで働いてみて。メルマガ「アラタナ版・月刊監査役」で伝えたかったアラタナのいいところ

アラタナ 実際にアラタナの監査役として働かれてみて、どうでしたか?

礒貝 印象どおりというか、印象以上だったんですけど、「スピード感」と「ゆるゆる感」の両方を強く感じました。自分の育った環境とは全然あまりにも違うものでしたので。

ベンチャーとしての意思決定や実行取組のスピード感もあるし、一方でフラットな雰囲気というか、ゆるい部分もあって…。他社から転職して来た人はいいけど、アラタナから転職していった人は、よその会社に行ってうまくいくのかな大丈夫かなと、余計な心配をしていたときもあります(笑)

アラタナ たしかに金融機関との違いは大きそうですね(笑)

礒貝 そうですね(笑)

仕事も含めて、アラタナに出勤することが楽しかったです。

創業して間もない頃の話だとお聞きしましたが、事務所が開くのが待ち遠しくて、一番に出社して掃除をしていたという社員がいたようですが、なんとなくその人の気持ちもわかります。

やっぱり会社が楽しいというのは大前提ですよね。素晴らしいことだなと思います。会社で起きる不祥事件とか色々ありますけど、会社が大好きな人が不祥事を起こすことはまずありませんよ。会社が楽しい、会社が大好きということは「最大のコンプライアンス」というか、「内部統制の要(かなめ)」だと思っています。

そういうアラタナのいいところをきちんと発信すること、「みなさんがいかに楽しい会社にいるのか」ということを若い人に伝えたいと思って、アラタナ版・月刊監査役というメールマガジンを書いていました。

アラタナ版・月刊監査役の画像

アラタナ それがアラタナ版・月刊監査役を出されてた理由だったんですね。

礒貝 若い人は自分が今いる会社の素晴らしさとか楽しさとか、私が育った時代との差に気づきにくいじゃないですか。昔から「年の数、飯の数」と言われます。若い優秀な社員の皆さんが、唯一、私に追いつけないもの…、それは「年数の、飯の数」です。

それを「時代の語り部」として、さまざまな経験談や切り口などから私が語ったら、何か少しはお役に立てるんじゃないかなと思ってました。

アラタナで過ごした3年半。1枚だけ残してある監査役の名刺

アラタナ では最後に、アラタナには今後どんな会社になってほしいと思っていますか?

礒貝 わいわい楽しく、エンドレスで成長戦略を求めていく、そんな会社であってほしいと願っています。「成長がすべてを癒す」というのは濵渦さんの言葉なんですけれど、やっぱりそれに尽きるのかなと。

常に新しい成長戦略を求めて「仕掛け(サービス)作り」、「仕組み(組織)作り」、「人(優秀な人材)作り」の3作りの改善改革。トップだけではなくてマネージャークラスも社員も含めて、みんなでそういう気持ちで会社の成長を願いかつ担うような、そういう会社であってほしいなと思います。

アラタナ ありがとうございます!そんな会社にしていければと思います。

礒貝 私はね、アラタナで働けてよかったなと思っていて、本当に感謝しています。

いちいち言うもんじゃないですけど、1枚だけ記念にアラタナの監査役の名刺を残しているんです。やめてからもね、わずか3年ちょっとだけだったけれども、アラタナの監査役だったこと、アラタナOBであることを誇りに思っていたいなってね。

アラタナのロゴの前にたつ礒貝元監査役の画像

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